心臓外科の術式
こんばんは、院長です。
久しぶりの登場ですが、私は元気にやっております。
皆様から忙しそうというお声もよくいただきますが、
おかげさまでバタバタながらも元気にやっております。
現在は
右京動物病院グループの総院長
二次診療施設の京都動物医療センターのセンター長
という役職に携わっており、さまざまな施設を行ったり来たりしながら、手術や診察、事務仕事に励んでおります。
そこで今回は私がよく手がける手術
・心臓外科(僧帽弁形成術)
・進行性脊髄軟化症(広範囲硬膜切開術)
・泌尿器外科(尿管切開術)
・肝臓外科(肝葉摘出術)
の中の、心臓外科の手術の流れについてお話しさせていただければと思います。
今回は怖い写真がいっぱいですので、苦手な方はここで読むのをお控えください。
さて心臓外科手術の中でも私は老齢の小型犬に多い僧帽弁閉鎖不全症に対する「僧帽弁形成術」を多く実施しています。
僧帽弁閉鎖不全症はいわゆる弁膜症であり、左心房と左心室を隔てる弁がベラベラになってしまい血液が逆流して、呼吸困難や咳などさまざまな症状を引き起こす病気です。
そのため、根治としては歪になった弁を形成して、きれいな形にする必要があります。
しかし心臓というのは常に動いており、止まってしまうと生物は生きられません。
ですので、首にある頚動脈・頚静脈という太い血管に管を通して、
それを体外循環装置と繋ぎ心臓の代わりにポンプを回すことで手術が可能となります。
このような形で送血、脱血管と呼ばれる管をまずは通して、心臓の中にアプローチする準備をします。
その後、心臓を止める必要があるのですが、その際には大動脈という一番大事な血管にカテーテルを設置して、そこから心筋保護液を冠動脈に流すことで心停止が得られます。
心臓に栄養を与える冠動脈にしっかりと保護液を流すために、大動脈を遮断していきます。
その後は左心房を切開して、心臓の中へとアプローチしていきます。
ここからが心内操作と呼ばれるところになるのですが、
まずはベラベラになってしまった弁を治すために、弁と繋がる腱索という靭帯のような組織を再建していきいます。
白い糸が人工腱索と呼ばれるもので、これらを乳頭筋という組織と弁に縫い付けていきます。
これが僧帽弁形成術の中の一つ目の大切な「腱索再建」です。
腱索再建が完了したら弁の動きがきれいになるのですが、それで終わりではありません。
大きく広くなってしまった心臓では弁がぴったりと閉じなくなっているため、それらを縮めてやる必要があります。
その子その子に合わせた適切な大きさに弁の口を閉めてあげることで、逆流の制御が可能になります。
これを「弁輪縫縮」といいます。
これらの処置が終わればようやく切開した心臓の縫合に入ります。
心臓が再度動き出した際に、縫合が甘いと大出血を起こします。
そのため切開した左心房を丁寧に丁寧に縫い合わせていきます。
縫合が完了したら、遮断していた大動脈を解放して、心臓を再鼓動させていきます。
ある程度しっかりと自分の動きが良くなるなまでは、ペースメーカーによる電気刺激で心臓を休ませて、ゆっくりと対応していきます。
一度止まった心臓が、再度動き始めてくれる瞬間はとても感動的なものがあります。
その後は大動脈や頚動脈、頸静脈に入れていた管を除去していき、閉創して手術は終了です。
こうして書くと非常に単純な手術にも思えますが、手術時間は5時間近くにも及び、術後の当直含めた集中管理も大事です。そして何より一つ間違えれば死に直結するとても怖い手術です。
だからこそ私一人でできる手術でもありませんので、手術メンバー全員が一致団結して高い志で臨む必要があります。
このように通常の施設では実施できないような病気でも当院では治せるように全力で取り組んでいます。
今回は難しく怖い写真ばかりで申し訳ありませんが、このような方法で手術をおこなっていることを知って欲しくて記載させていただきました。
心臓病で困っているわんちゃんはご相談してもらえればと思います。
院長
それでは今日はこの辺で・・・ 出来ましたら、「いいね」をお願いします♪
⭐︎インスタ始めました⭐︎
京都市内初の腹腔鏡システム、CT検査装置導入 [腹腔鏡下避妊手術、遠隔診断]
動物の総合健康管理施設右京動物病院 HEALTH CARE CENTER・SAGANO
JAHA認定 総合臨床医・外科医/ 国際中獣医学院認定 中獣医鍼灸師
ISFMキャットフレンドリークリニック ゴールド認定