右京動物病院(京都の動物病院)右京動物病院スタッフブログ奇跡の回復力

奇跡の回復力

診察

2月25日(日)

あと数日で2月も終わり、いよいよ春がやってきますね😊
寒いのが大嫌いな私にとっては待ち遠しくてたまりません😆
そんな中、何度か告知はしていると思いますが、右京動物病院ではカルテの電子化がスタートしました。
今までの紙カルテからの移行で、アナログ人間の私は日々てんやわんやしておる次第です。
みなさまにもご迷惑等おかけしているかもしれませんが、慣れるまで、どうぞお許し下さいませ。
カルテを電子化することで、新たにスタートする分院との情報共有が可能になります。
これからはもっとみなさまのお役にたてる安心で優しい病院になれるよう努めて参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。

さて、今回は肥大型心筋症という病気と闘っている15歳の猫のDちゃんのお話です。
肥大型心筋症については以前にもお話したことがありますが、高齢の猫ちゃんでよくみられる心臓の病態です。
心臓の筋肉が肥大することで心臓の収縮力が落ち、全身の循環不全が起きてしまいます。
症状はうっ血することで胸水がたまり、息苦しくなります。
猫ちゃんが息苦しそうに呼吸が荒くなるほとんどの場合で胸水が貯留しているといっても過言ではありません。
胸水がたまると肺が膨らめなくなり、酸素をとりこめなくなります。

Dちゃんは約2年前に初めて心筋症を発症しました。
胸水がたまり体のむくみもみられました。
胸水はとにかく早急に抜かなければなりません。
呼吸が荒くなっている状態で保定をして胸水を抜くという処置は非常に危険なものになります。
慎重に慎重に…
Dちゃんよく耐えてくれました。
胸水が抜ければ、今度は再びたまってこないように、心臓の機能を助けるお薬を使いながら維持していきます。
Dちゃんはそんな内科治療で約2年もの間、ずっと調子よく過ごすことができました。

しかし、今月に入ってDちゃんの状態が悪化しました。
また呼吸が荒くなってきたのです。
レントゲン検査をすると胸水の貯留が確認されました。

胸水は抜くことができましたが、前回と比べて心臓の病態は進行しています。
抜いた後の維持が大変難しくなります。
心臓の薬を増量し、水を抜く為の利尿剤を使います。
ここでDちゃんにとってリスキーな問題点があります。
利尿剤はうっ血を解除するためにはとても大事なお薬なのですが、腎臓にとっては良くないお薬になります。
Dちゃんはもともと腎臓がよくないため、利尿剤を使いすぎると、いわゆる腎不全が悪化してしまうのです。
心臓と腎臓の治療というのはシーソーのようなもので、どちらかの治療に力を入れすぎるともう一方が悪くなってしまします。
生きていく上では心臓の機能も腎臓の機能ももちろん無くてはなりません。
お薬の量を慎重に検討していく必要があります。

状態は決してよくないはずのDちゃんのすごいところは、どんな状態でも食欲だけはピカイチなんです。
そのおかげで体力も落ちず、上手にお薬ものんでくれて、少しずつ少しずつ状態はよくなりました。
そしていよいよ退院することができました。
よしっ😆と思ったや否や…
退院してすぐにDちゃんのオーナーさんから病院に電話がかかってきました。
なんと…帰ってからDちゃんの後ろ足がまったく動かなくなりひきずっているというんです😱
すぐに頭をよぎりました。
血栓症です。
血栓症の原因の多くは心筋症です。
循環不全のため血管内で滞留していた血液が血餅のように固まり、それが何かの拍子に全身に送り出される血管を流れて行き、Dちゃんの場合だとそれが後肢に流れて行く血管に詰まってしまったんです。
詰まってしまうとその先に血流が行かなくなり、放置すると冷たくなって最悪壊死してきます。

大ショックでした😭
とにかくもう一度病院に来て頂き、血栓症の治療開始です。
改善する可能性は決して高くありません。
血栓をつくらないようにするための注射を毎日毎日打ちます。
オーナーさんももう絶望的で、なんとか回復を祈るばかりでした。

しかし、数日経過して…
なんと…少しずつ後ろ足が動き始めたんです!!
冷たかった足先も温かく感じる様になってきました。
Dちゃんすごい!!
奇跡の回復力です。
嬉しくて嬉しくてオーナーさんと思わずはしゃいでしまいました☺
しばらくの入院で呼吸も落ち着き、今度こそ退院することとなりました。
退院後も調子はまずまず良さそうで、しっかり後ろ足でも歩けているようです!

猫の心筋症は胸水がたまる程病態が進行してこないと、なかなか気付くことができません。
そんな心筋症を診断するための簡易検査が最近でてきました。
血液検査で診断することができるので、負担も少なく、健康診断の一連にとりいれることができます。
気になる方はぜひご相談ください。

こんなに頑張ってくれているDちゃんに、またまた心を打たれました。
これからも病気と闘っているワンちゃんネコちゃんたちの力になれるよう、日々精進していこうと思います。

それでは今日はこの辺で・・・ 
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A.Hyakkoku@U-KYO-Animal Hospital

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